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換価分割と税金

2026年8月12日更新

換価分割は、相続財産を売却して換金し、受取った売却代金を共同相続人で分ける、遺産分割方法の一つです。

遺産分割方法として換価分割を選択して相続財産を取得するのですから、相続税が課税されるか否かの判定が必要となります。また、換価分割は、共同相続人が取得した相続財産を売却(=譲譲)するので、売主である共同相続人全員に譲渡所得税が課税される可能性があります。

換価分割を決定する前に、どのような税金が課税されるのか、どのような場合に課税されるのかなど、換価分割と税金について知っておいてください。

また、換価分割のための遺産分割協議書への記載や相続登記についての留意点を、まとめています。是非、知っておいて下さい。

※共同相続人・・・相続人が2人以上いる場合に、遺産分割が完了するまでの間は、相続財産は相続人の共有状態にあります。相続財産を共有している状態にある複数の相続人のことを『共同相続人』といいます。

換価分割と相続税〜相続開始日の時価は?〜

遺産分割方法として換価分割を選択した場合も、相続税の課税の有無を調べなければなりません。

相続税が課税されるか否かは、相続開始日(※1)現在の相続財産全体の時価総額(債務控除、葬式費用の控除後)が『遺産に係る基礎控除額』を超えるか否かで判定します。

相続税の計算に使う時価を、相続税評価額と言いますので、全相続財産の相続税評価額の総額(債務控除、葬式費用の控除後)が『遺産に係る基礎控除額』を超えると相続税が課税されると判定します。

相続開始日現在の相続財産の時価(=相続税評価額)は、通常、国税庁が公表している『財産評価基本通達』に則り計算されます。換価分割のために相続財産を売却した場合でも、相続税を計算するための相続財産の時価は、『財産評価基本通達』に則り計算される価額となります。売却価額ではありません。

例えば、被相続人が居住していた土地・家屋を換価分割する場合、相続税の計算のための土地・家屋の相続税評価額は、『財産評価基本通達』に則り計算されます。計算された相続税評価額は、この土地・家屋の売却価額とは異なる価額となります。

相続税の計算においては、遺産分割方法がどの方法(※2)であっても、相続財産の時価評価は『財産評価基本通達』に基づいて行われます。

(※1)相続開始日・・・被相続人がお亡くなりになった日

(※2)遺産分割方法には、『現物分割』『換価分割』『代償分割』があります。

換価分割と譲渡所得税

相続財産を共同相続人で換価分割する場合、相続税が課税されても、課税されなくても、譲渡所得税が課税されることがあります。

相続財産を売却(=譲渡)して売却代金を取得した相続人が、譲渡所得税の納税義務者(=申告と納税をしなければならない人)となります。相続人が複数人いて、売却代金を複数人で分けた場合、個々の相続人が、それぞれ譲渡所得税の申告と納税をしなければなりません。

譲渡所得税の確定申告

土地・建物・株式など相続財産である資産(棚卸資産を除きます。)を譲渡し、所得を得たときには、譲渡所得の確定申告を行わなければなりません。譲渡所得の確定申告は、通常、譲渡した年の翌年の2月16日から3月15日までの所得税の確定申告期間に行います。

譲渡所得は、下記の計算式で算出されます。

譲渡所得=売却価額ー(取得費+譲渡費用)

上の計算式により、譲渡所得がプラスの金額であれば、確定申告・納税が必要となります。

以下に、事例を使って計算してみます。

【事例】

相続財産である土地と家屋を、5,000万円で売却しました。譲渡所得はいくらになるでしょうか?

  1. 取得費(先代が相続財産を取得したときに支払った購入代金等)・・・不明
  2. 譲渡費用(仲介手数料、測量費など)・・・仲介手数料が1,716,000円

譲渡所得=50,000,000円ー(2,500,000円(※)+1,716,000円)=45,784,000円

この事例では、譲渡所得は45,784,000円となり、この譲渡所得額に所得税15.315%、住民税5%が課税されます。

売却代金5,000万円を、2人の相続人が2分の1の割合で分けた場合には、それぞれが2,500万円の売却代金を取得しているので、次の計算式で算出された譲渡所得に対する所得税と住民税を、各相続人がそれぞれ申告し、納税することとなります。仲介手数料などの費用も2分の1ずつの負担となります。

譲渡所得=25,000,000円ー(1,250,000円+858,000円)=22,892,000円

(※)先代が相続財産を取得したときの購入代金等が不明の場合、概算取得費を使います。概算取得費は『売却価額×5%』で算出します。

例えば、先祖代々受け継がれてきた土地・家屋を換価分割するケースでは、譲渡所得の計算式の『取得費(=土地・家屋の購入代価等)』が不明であるケースが多いです。『取得費』についても、確定申告を前にして慌てることがないよう、予め調べておくとよいでしょう。

換価分割と遺産分割協議書

遺産分割協議書には『換価分割』である旨を、はっきりと記載しておくことが望まれます。

一切の相続財産を換価分割するのか、相続財産の中の土地・家屋のみを換価分割するのかなど、遺産分割の内容はさまざまです。遺産分割協議の内容を適格に示す条項を記載しておく必要があります。

特に『代償分割』と区別できるように記載する必要があります。

換価分割と相続登記

相続財産である土地・家屋を換価分割する場合、不動産登記上の所有者は未だ被相続人ですので、売却先名義に直接所有権移転登記を行うことはできません。そこで、一旦、被相続人名義の土地・家屋について、相続人に相続を原因とする所有権移転登記を行わなければなりません。

このとき、共同相続人は法定相続割合で相続財産である土地・家屋を共有していますので、各相続人を法定相続割合で持分を所有する権利者として登記するのが原則ですが、換価分割を選択し土地・家屋を即売却することが決まっているため、便宜的に相続人の一人に単独の相続登記をすることが認められています。

相続人の代表者一人に単独登記をすることで、売却先との売買契約の締結、移転登記手続き、売却代金から必要経費を精算し各相続人に分配する事務を、相続人代表者が取り行うことができます。

実務上は、共同相続人全員が売主となり契約書を締結する(全員の署名が必要)など、換価分割の事務が煩雑になるので、代表者を選び、代表者が換価分割の事務を進める方法が採用されることが多いです。

共同相続人の代表者に便宜的に単独の相続登記を行い、代表者が換価分割の事務を進める場合には、遺産分割協議書にその旨を記載しておくことが望まれます。

単独登記と贈与税

共同相続人の代表者が単独で相続登記をして、相続財産である土地・家屋を換価分割した場合に、売却代金から必要経費を精算し、協議により決まっている分配割合で代金を他の相続人に分配した際、この分配金に贈与税が課税されるのではないかというご質問があります。

このご質問への回答として、国税庁が下記のとおり回答を示しています。

遺産分割協議に基づく分配金であるので、贈与と認定されることはなく、贈与税の課税はありません。

【回答要旨】

共同相続人のうちの1人の名義で相続登記をしたことが、単に換価のための便宜のものであり、その代金が遺産分割協議の内容に従って実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはありません。

(国税庁『質疑応答事例:遺産の換価分割のための相続登記と贈与税』に筆者加筆)

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