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相続税は、バブル期の地価高騰等による税負担の増加に対処するために、遺産に係る基礎控除額の引上げや最高税率の引き下げ等、大幅な緩和が行われてきた経緯があります。しかしながら、地価が下落してしまった昨今、地価が高い時代の相続税制では、相続税の重要な役割と考えられている「所得税の補完機能」と「資産の再分配機能」が低下することとなりました。そこで、今般の改正において、より高い遺産額の場合を中心に資産の再分配機能の回復を図るとの考え方に基づいて税率構造の見直しが行われました。
改正後の税率は、平成27年1月1日から適用されます。
相続税の税率構造の見直しに伴い、「相続税の補完税」であります贈与税の税率構造も見直されました。
そもそも、贈与税の税率は、相続税回避を防止するために、相続税よりも税負担が重くなるように設定されていました。
しかし、今般の改正では、「高齢者世代が保有する資産をより早く現役世代に移転させ、消費拡大や経済活性化を図るとの観点」から、贈与税(暦年課税の贈与税)の税率構造は緩和されています。(但し、最高税率は相続税と同様に50%から55%にアップしています。)
さらに、「直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例」(租税特別措置法第70条の2の4)が創設されました。これは、贈与が行われた年の1月1日に20歳以上である者が、直系尊属からの贈与により財産を取得した場合に、相続税法に規定されている一般税率ではなく、特例税率を適用して贈与税を計算するという制度です。この特例も、若年世代への資産の早期移転を意図して創設されました。
改正後の贈与税率と特例税率も、平成27年1月1日から適用されます。
税率 | 各法定相続人の取得金額 | |
改正前 | 改正後 | |
10% | 1,000万円以下の部分 | 1,000万円以下の部分 |
15% | 3,000万円以下の部分 | 3,000万円以下の部分 |
20% | 5,000万円以下の部分 | 5,000万円以下の部分 |
30% | 1億円以下の部分 | 1億円以下の部分 |
40% | 3億円以下の部分 | 2億円以下の部分 |
45% | ー | 3億円以下の部分 |
50% | 3億円超の部分 | 6億円以下の部分 |
55% | ー | 6億円超の部分 |
税率 | 一般税率(相続税法) | 特例税率 (租税特別措置法) | |
改正前 | 改正後 | ||
10% | 200万円以下の部分 | 200万円以下の部分 | 200万円以下の部分 |
15% | 300万円以下の部分 | 300万円以下の部分 | 400万円以下の部分 |
20% | 400万円以下の部分 | 400万円以下の部分 | 600万円以下の部分 |
30% | 600万円以下の部分 | 600万円以下の部分 | 1,000万円以下の部分 |
40% | 1,000万円以下の部分 | 1,000万円以下の部分 | 1,500万円以下の部分 |
45% | ー | 1,500万円以下の部分 | 3,000万円以下の部分 |
50% | 1,000万円超の部分 | 3,000万円以下の部分 | 4,500万円以下の部分 |
55% | ー | 3,000万円超の部分 | 4,500万円超の部分 |
上記内容は、「財務省HP平成25年度税制改正の解説」を参照・引用しています。財務省HPの解説はこちら↓↓↓↓
http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2013/explanation/index.html
税率の見直しにより、税額が変わる価格について簡単に解説します。上記の相続税と贈与税の税率表の中で、赤字で記載している部分が、税率見直しの影響を受ける価格です。
(1)相続税
「各法定相続人の取得金額」が2億円超3億円以下の場合、税率は40%から45%にアップします。そして、「各法定相続人の取得金額」が6億円超の場合、税率が50%から55%にアップします。「各法定相続人の取得金額」が3億円超6億円以下の場合は、改正前後で税率は50%で影響はありません。
(2)贈与税
課税価格(※1)が1,000万円超1,500万円以下の場合、税率は50%から45%にダウンします。そして、課税価格(※1)が3,000万円超の場合、税率は50%から55%にアップします。
(3)贈与税の特例税率
一般税率と比較して、課税価格(※2)が200万円超の各段階で、税率は5%もしくは10%低く設定されています。
(※1)配偶者控除額(適用がある場合)と基礎控除額の控除後の価格
(※2)基礎控除額の控除後の価格
相続税率は、より高い遺産額の場合を中心に税率がアップしています。一方、贈与税率は、最高税率を除き、現状維持もしくは緩和されています。
このような改正の方向性から、より多くの財産を保有している方々は、財産を相続時まで保有し続けますと、現行法よりも相続税負担が増加しますので、贈与税の特例を利用して財産を減らしていくことも、相続税対策の一つであると考えられます。
(簡易)財産目録を作成し、ご自身の財産及び負債を把握して下さい。そして、今後の生活資金を充分に確保した上で、お子様、お孫様へお譲りできる財産はないかどうかご検討下さい。
ご家族の財産を守るためにも、相続について、早く考え始め、じっくりと時間をかけて対策を講じるのが、まあるく円満な相続への近道となります。
贈与税の特例
「直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例」
(措置法第70条の2の4)
「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置」
(措置法第70条の2の2)
「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置」
(措置法第70条の2)
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